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2011.06.12

「焙煎のレシピ&方程式」

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震災から三ヶ月経ちました。被災されたさかもとこーひーの常連のお客様からのメールやお電話が震災前のような内容になってきました。勿論、まだまだ大変なことは当然なんですが…いつものようにこーひーがある暮らしになっていることに、少しホッとします。復旧の本当の厳しさはこれから長く長く続くと思いますが…そのエネルギーの為にも、いつもの暮らしがあってこそだと思いますので…さかもとこーひーが少しでも暮らしのリズムに役立って欲しいと願っています。

そんなこんなで…今日は、こーひーの焙煎や焙煎機について少しお話しします。この夏で、さかもとこーひーを開店して18年…私自身は、来月56歳になりますが…目標があと20年現役ですので…どうやら折り返し地点に来てしまったようです。

スペシャルティコーヒーに踏み込んで、10年を過ぎていますが…この10年で、本当に素材の質も量も向上し…数多くのサンプルから、よりクオリティの高い豆、よりさかもとこーひーのお客様のお好みに合った豆、さらに新しい魅力を持った豆を使えるようになってきました。

そんな毎日の積み重ねで…素材の微妙な魅力やキャラクターを細部まで感じ取れるようになり…その魅力を活かすイマジネーションも豊かになってきました。そこで、ここ数年感じていた事が…素材とイメージのレベルアップに焙煎機の性能が追いつかなくなって来たってことです。

先日、いつものワイン会の時に、フランスブレス産の地鶏を頂きました。その地鶏をテーマにサンク・オ・ピエのシェフがブログで書いています。http://plaza.rakuten.co.jp/cinqchef5/diary/201106060000/ 

「これは本当に美味い!!フランスに渡って焼き鳥屋になりたいくらいです。(笑)」

「この25年余りの料理人人生で、私の最も大切にしていることが、「いかに上手に肉や魚を焼くか?」という事。“フランス料理はソースが命”なんてよく言いますが、どんなに素晴らしいソースが作れても、上手に焼けていない肉や魚は決して美味しい料理にはなりません。私の料理の基本スタイルですね。」(ここは…どんなにエスプレッソの抽出やミルクのフォーミングの技術が素晴らしくても、上手に焙けていないコーヒーでは決して美味しいエスプレッソやラテ、カプチーノにはなりません。…そう伝わってきます。)
 
「ちょっとまねできないような火の通し加減。特に鶏の胸肉を食べていただくとその違いに驚くはずです。皮はカリカリに香ばしく、焦げるぎりぎりまでしっかりと焼いてあり、身のほうはしっとりととろけるような柔らかさです。先日も「どうしてこんなに柔らかいんですか?」と訊かれました。「鶏肉自体も地元の物で鮮度が良いのですが、90%以上は焼く技術なんですよ。と言っても特別なことしているわけではなくて、塩を振ってフライパンで焼くだけなんですけどね。オーブンも使わないんです。」と言うと、驚かれていました。 うちの厨房のガス台がプラックというちょっと特殊なガス台なんです。これがとても仕事の助けになっています。」

「肉や魚の主成分はたんぱく質ですから、熱を加えると縮みます。よくいわれるように「肉の表面を強火で焼きつけて旨味を閉じ込める」なんて言いますが、そんなことをすると肉の表面が縮んで中に対する圧力が高まり押し込められた肉汁が出てきてしまうんです。強火で一気に焼きしめるというのはそういうことになってしまうんです。」

「“とりあえず食える”という事と“最高に素材の魅力が引き出されて美味しい”というレベルの違い、、、。そのあたりをずっと追求してきたわけです。肉や魚を焼くなんて本当に誰にでも出来ることなんですが、そんなシンプルなことをちょっとマネの出来ないレベルにまで高めたいという気持ちでずっとやってきて、最近だいぶ上手になってきたような気がします。シンプルなものほど奥が深いです。」(達郎は、誰にでも出来ないことを出来るのが「芸」だ、って感じで言ってました。)

このような言葉に、同じ職人として、シェフの毎日の精進が伝わってきます。実際、サンク・オ・ピエのローストやポワレに慣れていると…他の店に行った時に、サンクとのあまりの違いに愕然とします。これは、素材と技術とイマジネーションのどれかが欠けても実現しない魅力だと思います。「芸」は、日々の精進によって磨くものだと思いますので…簡単に一朝一夕では身につかないものだと思います。

コーヒーでも、全く同じように感じていて…コーヒー豆を焼けば…コーヒーになります。少し焦がしても、少し生焼けでも、コーヒーになります。勿論、苦かったり、酸っぱかったり、冷めるとキレの悪い後味になったり…素材と焙煎のレベルによって様々ですが…。

で、素材とイメージのレベルアップに焙煎機の性能が追いつかなくなって来たって感じているわけです。そうは、言っても…安易に焙煎機を替えて…今までのさかもとこーひーのテイストが変わってしまっては台無しです。まぁ、焙煎する人間が同じならば…自ずと同じ方向に向かうものですが…時間がかかると、お客様に迷惑をかけてしまいます。焙煎機を替えたら…テストローストをして…営業再開する時には…今までのさかもとこーひーのテイストのままに、よりレベルアップしないといけないと思ってます。

その為に、この数年準備を進めてきました。ちょうど、タイミング良く、焙煎のアドバイスをする機会が増えてきまして…新しい焙煎機を使い…僕の焙煎手法… 「焙煎のレシピ&方程式」がそのまま効果的なことを確認できました。そのままと言うよりも、その焙煎機の方が、僕の 「焙煎のレシピ&方程式」がもっと効果的なことがわかりました。

実は、この業界には 「焙煎のレシピ&方程式」が無いんです。なんとなく、先輩からの言い伝えや、有名な人の受け売りばかりで…じゃぁ、焙煎とは何なのか?…が、明確にされていません。勿論、従来からのコモデティコーヒーの世界は、成熟されたノウハウがあると思いますが…スペシャルティコーヒーは、それまでにない際立った魅力やポテンシャルがありますから…それらを活かす為には、より明確な、ただ焙くだけでは無い 「焙煎のレシピ&方程式」が必要だと思ってます。

と、言う事で…これから出かけますので… 再来週になると思いますが…「焙煎のレシピ&方程式・2」に続きます。

震災をきっかけにして、Twitterはじめています。こーひーの話しをメインにぽつぽつやってます。
http://twitter.com/sakamotocoffee

「この味を知ることができて幸せです。」…お客様にそう言ってもらえるようなこーひーをお届けしたいと思っています。

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